命に別条のない患者達に不審死が多発する病院
3月8日の『ありえへん∞世界』にて、病院で起きた患者が不可解な死を遂げる事件が取り上げられます。
アメリカ・マサチューセッツ州ノーサンプトンの退役軍人医療センターで、主に元軍人の治療をする病院でこの事件が起きました。
この記事では患者の不審死について、そしてその真相を書いていくので最後までお付き合いください。
目次
【ありえへん世界】マサチューセッツ州ノーサンプトンの病院(VAMC)で起きた不可解な死
死の天使と呼ばれる看護師
患者に起こる不可解な急変
1件目
1995年の8月21日の夜、患者の容態が急変した合図のブザーが鳴り響きました。
医師が駆け付けた時には患者の心臓が停止していました。この患者、スタンリー・ジャゴドフスキーは糖尿病により右足切断の手術を受けていたが、術後の回復は順調でした。
にもかかわらず…
スタンリーは心停止により亡くなってしまいました(1人目)。
2件目
この不審死から4か月後の12月8日、また同じようにブザーが鳴りました。
風邪で入院していた患者、ヘンリー・ヒュードンの血圧が突然上昇し、看護師のクリステン・ギルバートが緊急コールをしました。
当然、医師は驚きました。ヘンリーは風邪をこじらせて入院しているだけですから。しかも既に回復し、翌日退院が決まっていました。
本来はこのように急変することは有り得ない状態です。
コールを受けた医師は処置を施し、患者も35歳と若かったため何度か持ち直しましたが…
ヘンリーは心停止により亡くなりました(2人目)。
3件目
ヘンリーの死から10日後の12月18日に、またもや患者の容態が急変し、同じ症状に陥ります。こちらの患者のフランシス・マリアーは、足のできものを取り除くために入院していただけでした。
他に持病もなく、こんな状態になることは有り得ないことでした。ただ幸いにも心臓は再び動き、亡くなりはしませんでした。
疑われる1人の看護師
看護師のジョン・ウォールはある疑念を持ち始めました。
そして彼は信頼する同僚のキャシー・リックスにその疑念を打ち明けました。
「クリステンが大量の薬を投与したのではないか?」
これがジョンが抱いた疑念です。
クリステンは上の3件全ての現場に居合わせていました。
ただクリステンは的確な判断力で、周囲のスタッフからの信頼が厚くリーダー的な存在でした。証拠があるわけでもないため、疑いだけで済んでいました。
しかし、その後も患者の不可解な死は続きました…
死の天使 クリステン・ギルバート
年明けの1996年1月26日、患者トーマス・キャラハンの急変で、緊急コールが鳴りました。そしてこの夜の担当もクリステンだったんです。トーマスも前の3件と同じ症状でした。心停止したものの、医師の懸命な処置で再び心臓は動き出しました。
1996年2月2日のクリステンが担当の日…
患者のケニー・カッティングが同じ症状で亡くなりました(3人目)。
”死の天使”
クリステンの担当患者の死亡数が多いことで、冗談めかして周りからこう呼ばれていました。
クリステンを疑う人もいましたが、彼女は変わりもせず仕事を続けていました。これまでと同じように出勤し、不審死の話題にも特に過敏に反応したりしなかったようです。
1996年2月15日、またしてもクリステンからの緊急コール。
そして同じように患者のエドワード・スクイラが亡くなりました(4人目)。
ここまでがこの病院で起きた不可解な死の数々です。そしてこの後事態は急変、これまでとは違う事件が起こります。
【ありえへん世界】患者の不可解な死 犯人はクリステン・ギルバート(クリスティン)
最初に言っておくと、上の事件は全てクリステン・ギルバートによる犯行です。患者の容態が急変するのは、彼女が患者の点滴に薬物を投与していたからでした。
彼女は勤務していた7年間で、80人以上の死亡と300以上の救急医療の原因となった可能性があるそうです。
クリステン・ギルバートの捜査が開始
クリステンが殺人の容疑者として調査される
1996年2月、相次ぐ不審死の全てにクリステンが居合わせたことから、ジョン、キャシー、レニー・ウォルシュの3人の看護師が警察に告発しました。心停止による死亡、エピネフリンの在庫が減少していたことを警察に訴えたんです。
これにより警察がクリステンの調査を開始。
エピネフリン
本来はアナフィラキシーショックなどに使用。健康な人間に大量のエピネフリンを投与すると、心停止を起こす致命的な危険があるそうです。
このエピネフリンを患者に投与して殺害していたと疑われていたわけです。
クリステンが爆破予告で逮捕される
調査を妨害するために電話を掛けた
調査が始まりクリステンの動向が探られる中…
1996年9月、病院に匿名の電話が届きました。
「病院に3つの爆弾を仕掛けた」
この爆破予告を受け病院は騒然。患者やスタッフは避難し、警察に通報もしました。
しかし爆弾は見つからず、これは虚偽の予告でした。
ただ病院内で既に警察が調査していたこともあり、虚偽の予告をした人物の特定には時間がかかりませんでした。
そして1996年10月、逮捕されたのがクリステン・ギルバートです。同年11月に起訴されました。
1998年1月に虚偽の爆破予告に対して裁判にかけられ、同年4月に15か月間服役の刑を受けました。
この虚偽の予告は、殺人の調査から目を逸らすためのものでした。
クリステンが殺人罪で起訴され、有罪判決を受ける
この間にも調査は行われていて、いくつかの遺体が掘り起こされました。遺体を検査した結果、処方されていないはずのエピネフリンが見つかったのです。
1998年11月にクリステンは、ヘンリー・ヒュードン(2人目)、ケニー・カッティング(3人目)、エドワード・スクイラ(4人目)の患者3人への殺人罪と、患者2人への殺人未遂で起訴される。
また1999年5月に、スタンリー・ジャゴドフスキー(1人目)についても起訴されました。
2000年11月、クリステンは裁判にかけられました。
2001年3月、クリステンに3件の第1級殺人、1件の第2級殺人、2件の殺人未遂で有罪判決を下す。クリステンは4回の終身刑、追加で20年を宣告されました。
1級と2級の違い
計画されたものかどうかで違います。
計画された殺人が第1級殺人、突発的な殺人が第2級殺人。
以上が病院での不可解な死と、その犯人逮捕・裁判までの流れです。
ただ、看護師のクリステンが患者を殺害する動機が見えてきませんよね。なぜ彼女がこんなことをしたのか、その動機について書いていきます。
【ありえへん世界】クリステン・ギルバートの犯行動機は警備員への愛
患者の容態が急変すれば、警備員が駆けつけてくれる
この病院のシステム
緊急コールが鳴った際(緊急医療事態)、警備員の立ち合いが義務づけられています。
クリステンは結婚して子供も2人いたんですが、夫婦仲は冷え切っていました。
そんな中彼女は、病院で警備員としてはたらくジェームス・ペローに惹かれていったんですね。ただ同じ職場でも警備員と看護師では接点がなく、仕事中にはほとんど会えません。
ジェームスに会いたい…
これが犯行の動機です。
クリステンはジェームスに会うためにこの病院のシステムを利用していたんです。患者の容態を急変して緊急コールをすれば、ジェームスが来てくれます。
ジェームスに会うため・働いている姿を見せて気を引くために、患者にエピネフリンを付与して緊急コールをしていたんですね。
【ありえへん世界】アメリカの病院での不可解な死とクリステン・ギルバートまとめ
ということで不可解な死は霊的なものでも何でもなく、1人の看護師によるものでした。警備員の気を引くために薬を投与して、患者を殺めていたんですね。
クリステン・ギルバートはこのような犯行をしていたわけですが、実は他にも問題行動はあったんです。
それについてはこちらをご覧ください。
クリステンの現在・生い立ち